――「私は、治るためにここにいる」
「これ以上は自力ではどうにもならないかもしれない」
そう感じ始めたのは、回復を望みながらも、どこかに行き詰まりを感じていた頃でした。
薬の副作用に苦しみ、気持ちの波にも翻弄されながら、それでも「もっとよくなりたい」と願っていた私に、主治医は新しい選択肢をくれました――
それが、“rTMS治療”でした。
「このままじゃ何も変わらない」
そんな思いが心の中で強くなっていた頃、主治医から提案されたのが「rTMS治療」でした。
うつ病に効果があるとされる比較的新しい治療法です。
薬の副作用に悩まされてきた私にとっては、まるで“光”のようにも思えました。
でも、同時にそれを受けるには“入院”が必要だと聞いて、私は迷いました。
「本当に大丈夫だろうか」
精神科に入院するという現実に、正直なところ怖さや偏見をまだどこかに抱えていました。
それでも私は、「変わりたい」「生きたい」という気持ちを選びました。
4ヶ月の待機期間を経て、ついに入院が決まりました。
慣れない環境、減薬の離脱症状、眠れない夜。
最初の数日はとにかく「耐えること」に必死でした。
けれど、そんな中で少しずつ「安心できる場所」ができていきました。
夜中に不安で眠れなくなったとき、ナースステーションに行けば、必ず誰かが「話そうか」と寄り添ってくれました。
何も話せない日も、ただそばにいてくれる。
それだけで心が少しほぐれました。
rTMS治療が始まったのは入院して1週間後でした。
頭に磁気の装置を当て、脳に刺激を送る。
最初はびっくりするほど痛くて、「これを毎日やるの?」と不安になったけど、不思議と慣れていきました。
「この痛みに耐えるのは、私が“生きたい”と思っているから」
そう思えるようになったのは、何日かしてからのことでした。
治療は1回40分。
1日1回、週5日で3週間。反応があればさらに3週間延長されます。
私は延長になりました。つまり、少しだけ効果が見えたということです。
「死にたい」という感情が、ふっと遠くなった日がありました。
それが治療の効果か、入院という安全な環境のおかげなのかはわかりません。
でも、“少しでも気持ちが変わってきている”という事実が、大きな希望でした。
病院の裏にあった花壇。
咲き始めたチューリップを見つけたとき、私はなんだか泣きそうになりました。
「こんな気持ち、久しぶりだな」って。
患者さん同士のさりげない会話、看護師さんの優しい声かけ、
少しずつ、少しずつ、心が動き始めていきました。
「私は、治るためにここにいる」
そう思えたとき、私の中で何かが確かに変わり始めていました。