第8章:rTMS治療、初めての入院

rTMS治療体験

――「私は、治るためにここにいる」

「これ以上は自力ではどうにもならないかもしれない」

そう感じ始めたのは、回復を望みながらも、どこかに行き詰まりを感じていた頃でした。

薬の副作用に苦しみ、気持ちの波にも翻弄されながら、それでも「もっとよくなりたい」と願っていた私に、主治医は新しい選択肢をくれました――

それが、“rTMS治療”でした。


「このままじゃ何も変わらない」

そんな思いが心の中で強くなっていた頃、主治医から提案されたのが「rTMS治療」でした。

うつ病に効果があるとされる比較的新しい治療法です。

薬の副作用に悩まされてきた私にとっては、まるで“光”のようにも思えました。

でも、同時にそれを受けるには“入院”が必要だと聞いて、私は迷いました。

「本当に大丈夫だろうか」

精神科に入院するという現実に、正直なところ怖さや偏見をまだどこかに抱えていました。

それでも私は、「変わりたい」「生きたい」という気持ちを選びました。

4ヶ月の待機期間を経て、ついに入院が決まりました。

慣れない環境、減薬の離脱症状、眠れない夜。

最初の数日はとにかく「耐えること」に必死でした。

けれど、そんな中で少しずつ「安心できる場所」ができていきました。

夜中に不安で眠れなくなったとき、ナースステーションに行けば、必ず誰かが「話そうか」と寄り添ってくれました。

何も話せない日も、ただそばにいてくれる。

それだけで心が少しほぐれました。

rTMS治療が始まったのは入院して1週間後でした。

頭に磁気の装置を当て、脳に刺激を送る。

最初はびっくりするほど痛くて、「これを毎日やるの?」と不安になったけど、不思議と慣れていきました。

「この痛みに耐えるのは、私が“生きたい”と思っているから」

そう思えるようになったのは、何日かしてからのことでした。

治療は1回40分。

1日1回、週5日で3週間。反応があればさらに3週間延長されます。

私は延長になりました。つまり、少しだけ効果が見えたということです。

「死にたい」という感情が、ふっと遠くなった日がありました。

それが治療の効果か、入院という安全な環境のおかげなのかはわかりません。

でも、“少しでも気持ちが変わってきている”という事実が、大きな希望でした。

病院の裏にあった花壇。

咲き始めたチューリップを見つけたとき、私はなんだか泣きそうになりました。

「こんな気持ち、久しぶりだな」って。

患者さん同士のさりげない会話、看護師さんの優しい声かけ、

少しずつ、少しずつ、心が動き始めていきました。

「私は、治るためにここにいる」

そう思えたとき、私の中で何かが確かに変わり始めていました。

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