第10章:現在の回復の様子

うつ病体験記

――「今日また生きられた、それだけで満点」

この章では、私がいまどんなふうに日々を過ごしているかをお伝えします。

病気の真っ只中にいた頃と比べたら、たしかに私は変わりました。

でも、「元通り」ではありません。

完璧じゃなくても、毎日生きていられる。それだけで十分だと、今の私は思えるようになりました。


「もう治ったの?」「今は元気になったの?」

そんなふうに聞かれることが増えてきました。

うまく答えられない自分がいて、言葉に詰まることもあります。

たしかに、毎日泣いていた頃と比べたら、私は変わりました。

寝たきりだった日々、息をするのもつらかった時期からすれば、

仕事もできて、外出もできて、少しずつ前を向けるようになりました。

でも、だからといって「完全に元に戻った」わけではないのです。

そもそも、“元に戻る”というのはどういうことなんだろう。

病気になる前の私が「本来の自分」だとしたら、

そこに戻ることが回復なのか?

違う気がしています。

今の私は、あの頃のように無理をしません。

疲れたら休む。怖かったら一度立ち止まる。

「できないこと」があっても、前ほど自分を責めなくなりました。

だから、「元に戻る」というより、

「新しい私として生きていく」ことが、私にとっての回復なのだと思っています。

今は、週3日だけパートの仕事をしています。

家で経理の仕事を手伝ったり、自分のペースで過ごしています。

正社員だったころのようなプレッシャーも、

“完璧でなければ”という焦りも、今はありません。

もちろん、たまに「もっと頑張らなきゃ」と思ってしまう瞬間はあります。

でも、そんな自分にも「いいよ、それでも」と声をかけられるようになりました。

SNSやブログで、自分の体験を発信するようになったのも、

「誰かの役に立ちたい」という気持ちが出てきた証拠かもしれません。

“伝えること”は、過去の私を癒すことでもあります。

「こんなに苦しかった私が、ここまできたよ」と、

昔の自分に教えてあげたくて、書いています。

時々、不安になります。

「また具合が悪くなったらどうしよう」

「このまま、何も変わらなかったらどうしよう」

でもそれでも、「今日、生きられた」

それだけでいいと、今は思えています。

70点でも、50点でも、0点の日があっても、

生きているだけで、私は合格。

完璧じゃない私を、今の私は、ちゃんと認めてあげられる。

それが、何よりの“回復”なのだと思います。

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